続・着こなし講座:内容

  • 着心地(きごこち)

    和装ブラ美意識は、きものをきれいに美しく着る上で最も重要な要因ですが、きものを着始めると気になってくるのが着心地です。着心地には、物理的な「触感」と心理的な「満足感」の二面性があります。

    まずは、肉体的な触感による着心地ですが、その快感情は生地の材質や仕立て方の良し悪しなどによって左右されます。たとえば、肌触り、保温性、清涼感、通気性、吸汗性、発汗性、重量感、フィット感など、目には見えにくいものの多岐にわたります。麻、綿、化学繊維をはじめ、縮緬、大島、結城、塩沢など、多くの生地の着心地について学びます。

    しかし、私たちがきものに限らず、衣服に求め、反映させている心情は、単に肉体的に着心地が良いという快適性だけではありません。たとえば、仕事が終わって自宅に帰ったときには、まずはビジネスウェアを脱ぎ、ジャージかジーンズなどに着替えるか、ひと風呂浴びてパジャマに着替えるかも知れません。でも、スーツを格好良く着たいと思うときは、ブラ・ガードルを付け、ハイヒールを()くこともあります。それは、ブラ・ガードルに少々圧迫感があり、ハイヒールが窮屈(きゅうくつ)であっても、スタイルを良く見せたい気持ちを優先するからです。また、その身体的な負担を緊張感として心地良いと思う場合もあるでしょう。このような事例は、スーツに限らず、ネクタイや革靴(かわぐつ)に代表されるように至る所で見られます。つまり、物理的な着心地より心理的な着心地の方が大切なのです。このようなきものにおける精神的な着心地について解説しています。

  • 印象(いんしょう)評価法(ひょうかほう)

    イメージシミュレーターこれまで、きものを美しく着るために、上品(じょうひん)(いき)洒落(しゃれ)格式(かくしき)など、伝統的な感性表現について学んできました。これらの感性領域が見えはじめた人なら、着付に限らずきもの、帯、羽織などのコーディネートにも自信が持てるようになったはずです。しかし、この感性領域は、先人たちが残してくれた究極の美意識ですが、その輪郭(りんかく)は至って曖昧(あいまい)です。つまり、上品と言う領域と粋と言う領域には個人差があり、しかも、鮮明な部分とどちら付かずのぼやけた部分があります。それには、情緒的(じょうちょてき)で奥ゆかしいと肯定的(こうていてき)(とら)える人もありますが、わかりにくくファジーであると否定的な意見もあります。

    そこで、SD(エスディー)(ほう)の印象評価による、いわゆる「見える化」技術を取り入れました。たとえば、上品という言葉には優雅で無欲な印象があり、粋にはすっきりとした中にも渋さを感じますが、一方で、どちらもきれいで美しく清らかな印象を受けます。前者を対比(たいひ)因子(いんし)と呼ぶなら後者は共通(きょうつう)因子(いんし)ともいうべき特徴です。また、上品と粋について、共通因子が認められれば相関(そうかん) がある、と評価します。

    上図イメージシミュレーターは、こちら

    この章では、SD(エスディー)(ほう)を用いてきものの感性領域を分析し、誰にでも簡単に説明・継承ができるように考察していきます。論理的なファッション・センスが習得できるだけではなく、あらゆる製品開発のヒントを得ることにもつながるでしょう。

  • 北斎小紋(ほくさいこもん)

    新形小紋帳葛飾北斎(かつしかほくさい)(1760-1849)は、日本を代表する浮世絵(うきよえ)巨匠(きょしょう)ですが、現代風にいう「デザイナー」であった一面は、あまり知られていません。江戸時代のことですからファッションデザイナーならぬ「きものデザイナー」ということになりますが、当時流行していた「江戸小紋(えどこもん)」をしのぐ(すぐ)れたデザインやパターンが残されています。北斎が考案(こうあん)し、染物屋(そめものや)などが手本として利用していた「新形小紋帳(しんがたこもんちょう)」には、ありとあらゆる事物(じぶつ)から洗練(せんれん)されたシンプルな文様が数多く創作されています。CG(コンピュータグラフィックス)のある時代ならともかく、墨筆(ぼくひつ)とぶん(まわ)しだけで現代人にも到底およぶことのできない美しい図形の数々には驚かされるばかりです。その北斎模様についてを学びます。

    北斎小紋は、こちら

    北斎模様を現代に(よみがえ)らせた、この北斎小紋は、NHK総合テレビ「歴史秘話ヒストリア:北斎ミステリー!私は父の影武者 娘お(えい)」に撮影のため提供しました(2017/9)。

  • 見立(みた)

    枯山水着物の見立てとは、お顔映(かおうつ)り、コーディネート、モノの良し悪しなどを選定・評価・判断することですが、本来の見立てには、「物を本来のあるべき姿ではなく、別の物として見る」という漢詩や和歌で用いられてきた技法があります。たとえば、日本庭園などで見られる枯山水(かれさんすい)は、石や砂で海や水の流れなどを表現しますが、より身近なところでは「月見うどん」のように生卵を満月に()()えて趣向(しゅこう)()らします。つまり、石や砂を前景として見ながら、そこに暗示された背景を思い起こしているのです。そのためには、「美」や「(おもむき)」の本質を(きわ)め、前景と背景との間で共通の因子(いんし)をあらかじめ会得(えとく)しておく必要があります。このような日本人が共有している美的な感性「見立て」によるコーディネートについても解説しています。

    千早ぶる 神代もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは千早(ちはや)ぶる 神代(かみよ)もきかず 龍田川(たつたがわ) からくれなゐに 水くくるとは」。これは、小倉百人一首に出てくる在原(ありわらの)業平(なりひら)朝臣(あそん)の和歌です。「神代の大昔からも聞いたことがない。龍田川が紅葉の落葉で真っ赤に染まったことを」といった意味ですが、その情景を、縞を川に「見立て」た白大島、そして、紅葉柄(もみじがら)の八寸名古屋帯で表現してみました。人は、提示された前景に何かが見えたとき、大きな喜びと感動を得ることができるでしょう。

  • 実習講座(じっしゅうこうざ)

    • 和食・会席料理の食べ方を課外授業として実習します。
    • 衿や袖口などのシミ抜きの仕方。
    • 草履の鼻緒のすげ方。
    • 足袋や着物の洗い方。
    • その他